2009.11.2
幸か不幸か釣り場が近くにある為、ちょっと小雨が混じる夜中に出撃。
時たま、冷たく細かい雨が首筋に入る込む。
北風が強く寒気も増していて、南風が吹いた前日の小春日和が遠い過去のようだ。
荒川河口の周辺。
北風が強い為、上げ潮が効いているのかどうか分からないが、流れに打ち込んでいく。
当然の事の様に、アタリすら得られない。
頭も朦朧としてきて、今日はダメかなあと、少しポイントをずらしていると、ゴクンと明快なアタリ。
あれ!居るではないか。
1本ばらして、少し大きいのを掛けた。
ZBLシステムミノータイダルで65センチ
ううむ。
何時もは嬉しいけど、この時期はもう少し型が欲しい。
で、結局この魚一本で、アタリもなくなってしまった。
止んだり降ったりする雨に嫌気をさして、撤収。
この日の夜も凝りもしないで出撃。
下げ狙いで、北風が吹き、良い具合でシンクロしていた。
これは貰ったでしょうと思ったら、これまた反応が無い。
前回釣れたポイントを叩くが、全然ダメ。
昨日と違う点は、潮の流れだけ。
いや、昨日はなかった煌々とした満月が、雲に隠れたり出たりしている。
ルアーや小魚の見え方は、人間目線と鱸目線は、一体どれほどの違いがあるのだろうか?
真っ暗な水中で(少なくとも人の目にはそう見える)、小さな生物を捕らえる能力。
人間には小さな小魚にしか見えないものでも、鱸にしてみればある程度の大きさなのだが。
水鳥達は、かなり高いところから水面を俯瞰し、小魚を探す能力がある様に、鱸にもそういった野性的能力はあるはず。
一体、人間の投げているルアーが、鱸にとってどう見えているのか疑問に思う。
そもそも、そこに狙うべき鱸が居るのかも疑問に思えてきた。
大体、やる気のある魚がいれば、必ず喰って来る筈だろ?
と、まだ体力のあるうちは、そんな風に色々考えているのだが、これが疲れてくると釣りが惰性的になってしまう。
ちょっと、レンジを変える為、ルアーチェンジ。
一投目、モソっと言うバイト。
あれ?居るのか?
2投目、ヒット。
あれ!居るじゃん!
60有るなし
多少、水面が荒れ気味だったので、ベイトが下がっていたのかもしれない。
続けざまに釣れたが、SU-SANなかなか良い仕事をしてくれた。
でも、型が...。
と思っていた矢先に、ヒット!
ギュイーン!とラインを出していく!
これは!デカイか!?
と、一瞬緊張が走ったが、何か違う。
マルタ君、君も食事中だったか。
申し訳ない。
まあ、一応魚は釣れていたので、これからが勝負かと意気込んでいたが、ポツポツと雨が降り出した。
少し位の雨なら行けるかな?と思っていたが、次第に大粒の雨になってきた。
しかも風も強くなり、台風中継のレポーターよろしく、天気は豹変していた。
煌々と輝いていた満月は、いつの間にか分厚い雨雲に蔽われ、波の高さが目に見えて高くなっていた。
あまりの急激な変わりように、戦慄が走らないわけには行かなかった。
上半身は、ゴアテックスのジャケットを着ているが、下半身はずぶ濡れ状態。
長靴の中は水が溜まる一方。
濡れた下半身から一気に体温を奪われ、寒くて釣りどころではない。
とにかく寒い。
ガチガチと歯を震わせ、思わず寒い寒いと口にだしていた。
確か、前にも急に天気が豹変して雷雨に変わった時も会ったが、まさかまた遭うとは思わなかった。
自然は、美しい景観を見せてくれる反面、時として人間に鋭利な牙をむく。
僕は、強風に翻弄され、尻尾を巻いてその自然から立ち退くしかなかった。
早くここから立ち去れ!
風はそう叫んでいるようにも思える。
これは、日頃の行いが悪いが為の天罰なのか?
いや、そんなのではない。
これが本来の自然の姿なのだ。
僕は体を震わせ、昨今の遭難事故を思いながら、現場を後にした。
寒さは、体力を奪い、気力や精神さえも奪う。
水に濡れてはダメなのだ。
ジョン・マクレーン警部の様にタフでありたい。
「クソったれ!」
ジェームズ・ボンドの様にクールでありたい。
「空では死に切れなかったが、ベッドの上で死んでもらおうか」
ハリソン・フォードの様に...、いやこれは脇役だったな。
「奴のタマをもぎ取ってキャッチボールでもしてやろうか!」
彼等は危機的状況でも、ジョークは忘れない。
この時の僕はジョークさえ思いつかず、釣りに対して少し限界さえ感じていた。
とにかく熱い風呂に入りたかった。