2018.8.13
早朝5時に唐沢鉱泉分岐にバスで降り立つと、冷やりとした空気に包まれた。
昨日、竹橋からバスで出る時は蒸し暑かったのに、やはり標高が多少あるところでは寒い。
ここから1時間弱歩いて唐沢鉱泉まで歩くが、思いのほか青空が広がって、とにかく、都会の喧騒を忘れさせてくれるくらい静かで気持ちが良かった。
今回は、天狗岳(標高は2646メートル)という山に登る。
8月の夏山は石川県の山に登ろうとしたのだけど台風で流れてしまったので、相棒が上手く調整してくれて今回は八ヶ岳周辺ということになった。
八ヶ岳周辺は4,5回登っているんだけど、たしか天狗岳は横目で見ただけだったからこの山に登るのは今回が初めて。
まあ、殆どの人は隣の八ヶ岳や甲斐駒ケ岳に登っており、この山の登山者はそれ程多くは無いだろう。
唐沢鉱泉までは車で行けるので、大体の人はここに車を停めて、登山をしたり散策したりと日帰り登山が多いと思われる。
そしてここからが天狗岳の登山道の入り口となり、鬱蒼と苔むした樹林帯を登っていく。
これが素晴らしい景観で、写真を撮ったりとなかなか前に進まない。
まあ、今回はゆっくりとしたペースで大丈夫だと相棒。
登りが急峻になると、汗が吹き出し、喉も渇いてくる。
500mlの飲料があっと言う間に無くなってしまう。
山登りは疲れるし、汗もかくし、泥で足元が汚れるし、なんでわざわざ休みの日にこんな事をしてるのかとも思うが、やはりそのシチュエーションで苦しさの感じ方も変わってくるのだ。
もしこれが土砂降りだったりしたら苦行になってしまうだろうけど、この日の天気は微妙だが良い登山ができそうだ。
そんな感じで第一展望台へ着くと、文字通り展望が開けてきた。
いやあ良い景色だ。
多少雲が有るが、手前の山の峰々と遠くの町並みを見下ろす。
水蒸気がゆっくりと発生していてずっと見ていたい景観であったが、山頂付近はすでにその水蒸気に覆われてい真っ白だった。
たぶん山頂に行く頃には雲の中だなと思い先を急ぐ。
後は尾根伝いを登るのだけどやはりガスが出てきて、第2展望台では真っ白で何も見えなかった。
大きな岩場のガレ場が出てくれば山頂は後少しだ。
ぜいぜい言いながら後は黙々と登るだけ。
こぢんまりとした山頂には数組の登山客が早い休憩をしていた。
更に先を見るともう一つの山頂があり、天狗岳には西と東の二つの山頂があって、もう一つのピークの東天狗岳を目指す。
途中ガスが少し取れて、東天狗岳の全景と南八ヶ岳への稜線が現れたしたが、さすがに5キロ先の赤岳までは見えないようだ。
10時過ぎに東天狗岳に到着。
東天狗岳は、西天狗岳よりも4メートル低い2460メートル。
ここでゆっくりと休憩をする。
霧で太陽が隠れると次第に寒くなってきた。
夏山は暑いので敢えてガスを持ってこなかったから、温かいコーヒーやカップ麺を食べたかったなあと。
ただ、霧が取れて太陽が少し現れると、夏の暑さが戻ってくる。
静かな山頂で、ゆっくりと流れる雲を眺め、眼下に見える景色などを俯瞰してると、イワシの缶詰だって御馳走なのだ。
天狗岳は、八ヶ岳の赤岳などに比べればこぢんまりした山だ。
どうしても隣に八ヶ岳があるから登山者はみなそちらに流れるが、逆に人があまり居ないのが魅力と言えば魅力。
さて、ゆっくりしたら予定通り下山する。
大体の人は、黒百合ヒュッテを経由して唐沢鉱泉までピストンするだろうが、僕らは中山峠から下山道に入り小海町方面へ行く。
まずは中山峠まで歩みを進める。
心配された雨は何とか持ってくれた。
しかも時折青空まで見えるから有難い。
結構前に、このルートは歩いているはずで中山峠もその時に通り過ぎたが、その時は真冬だったので全く景観が違うから思い出せないのだ。
中山峠に着き、そこから一気に標高を落とす。
この辺りは日があまり当たらないのか、また苔むした原生林が広がっていた。
これもまた神々しく素晴らしい景観なので、このせいで多少ペースが落ちるかもしれない。
その急な下山道を過ぎると、足元がぐちゃぐちゃな泥濘コース。
もしこんな場所で夜になりライトも無かったら、真っ暗になってしまい歩くのも厳しいだろうと想像してしまう。
そんな場所だ。
そしてまた急な降りが始まる。
鳥か虫の鳴き声か分からないが、森にそんな音が木霊する。
途中にトロッコの廃レールが現れて、昔杉などの木の伐採した時に使った名残りだろう。
そしてやっと森を抜けると人工物が現れたが、それがしらびそ小屋だ。
なかなか渋い、ひっそりとした山小屋で、その付近に緑池(と言ったか?)がありなかなか神秘的で良い。
さすがに疲れたのでここで一休み。ふう...。
ここに老夫婦の登山者も休まれていて中々微笑ましい光景だった。
ここから登っていくのだろうか。
今から登るとなると大変だよなあと心配になってくるが、中山峠を越えた黒百合ヒュッテまで行くのかもしれない。
さて重い腰を上げ先を急ぐ。
このルートはかなりマイナーでは有るが、もちろん何組かの登山者も登ってくる。
今自分等が降りてきた下山道を考えると山頂まではかなり長く、いやあ大変だよなあと思う。
もしかしたら先ほどのしらびそ小屋に泊まるのかもしれないが、山はあっという間に暗くなってしまう。
どこかからかチョロチョロとした水が現れそれが次第に大きくなり、足元から沢の音がしてきた。
沢が見えてくるとゴールも間近だが、これがまた長い長い。
まあ、まだ景観が美しい所を歩いてるから良いがさすがに疲れてきた。
雰囲気的にゲートはもう少しだが、そこから車道に出て少しまた歩くことになる。
15時過ぎにやっと今回のゴールである稲子温泉に到着。
熱い湯が身に沁み込んで来て、汗や疲れを落とす。
二人して思わず「ああー」とか「いやいやいやぁ」など3回くらい唸ってしまう。
今まで入った温泉で3本目にはいる気持ちよさだった。
そこからバスで小海駅まで行って上信越で帰路に着く。
小海線は、流れる車窓から見える田園風景と、小さな駅一つ一つが郷愁的であった。
夜でも蒸し暑い空気が纏わりつき、人でごった返した喧騒に比べると、やはり長野の田舎は別天地に思えてくるのだ。